高野悦子「二十歳の原点」案内
二十歳の原点(昭和44年)
1969年 5月 3日(土)
 バイト先の従食で隣りに坐った男の人が、京都国際ホテルに職場反戦があるのを告げた。

 隣りに座った男の人は、小山田である。
 「職場反戦」は、主にベトナム戦争反対を掲げた労働者の団体である反戦青年委員会のうち、各職場の青年部による組織である。
 反戦青年委員会は全国レベルでは1965年、日韓基本条約批准に反対するために、社会党や総評(日本労働組合総評議会)・総評系労働組合が呼びかけて結成された。京都反戦青年委員会は総評京都地評(京都地方評議会)に事務局を置き、「職場反戦」に加え、個人加盟の「地区反戦」を府下で洛北、洛西、洛南など9つ有していた。「職場反戦」と「地区反戦」は京都地区反戦連絡会議を作り、機関紙「反戦通信」を発行していた。
従業員食堂
☞1969年5月12日「あそこの職場反戦の小山田君とサテンで「闘い」について話しました」

京都国際ホテル労働組合事務所

 高野悦子が当時出入りした京都国際ホテル労働組合事務所は、京都市中京区油小路通竹屋町下ルにあった。建物は現存せず、駐車場になっている。
労働組合事務所地図労働組合事務所

 新聞を読んだ。放送法電波法の改正とか、大学管理法の立法化準備だとか、地方自治体で合理化の一環として六五年ごろから民間委嘱がふえつつあるとか、公害のこととか

朝日新聞1969年5月2日 読んだ新聞は、「朝日新聞(大阪本社)1969年5月2日」(朝日新聞社、1969年)である。
 「郵政省は、41年の通常国会で審議未了となった放送法、電波法各改正案を今国会にあらためて提出したい意向だったが、同改正案について自民党内の意見調整がつく見通しがないため、提出は見送られる情勢となった」(『今国会は見送り─放送法・電波法改正案の提出』「朝日新聞(大阪本社)1969年5月2日」(朝日新聞社、1969年))
 「近畿の各市で、最近ゴミ集め、くみとり、国保の集金、水道修理などの仕事をそっくり業者に頼むところがふえた。東大阪市など、こうした〝準市職員〟なみの民間従業員がざっと600人。まるがかえの市職員をあてるより安上り。これを自治省は「行政の合理化策」というが、心配なのは市民サービスの質低下。都市行政の下請けが広がるにつれて問題となりそうだ」(『都市行政の下請け広がる』「朝日新聞(大阪本社)1969年5月2日」(朝日新聞社、1969年))
 「自治体と企業との間に、公害防止の協定を結ぶ動きが広がっている。この4月24日には、静岡県富士市で、地元の公害発生源である製紙工場と市当局の間に低硫黄の重油使用、集合煙突の設置、騒音、悪臭対策などを決めた協定書が取りかわされた。鹿島臨海工業地帯をかかえた茨城県でも、近く進出する23社の企業全部と協定を結ぶ。年々ひどくなる公害、一方に高まる住民の不満。こうした事態を前に自治体は、これまでのように被害調査や苦情処理をしているだけではすまなくなった」(『自治体・企業、広がる公害防止協定』「朝日新聞(大阪本社)1969年5月2日(朝日新聞社、1969年))

 そのあと学校へ行って図書館で本を借り、恒心館にいき、牧野と会って開講の問題について話し、
興学館(図書館)  図書館は、立命館大学広小路キャンパスの興学館である。立命館大学では1967年10月11日、衣笠キャンパスに新図書館が開館している。このため広小路キャンパスの図書館はその分館として位置づけられた。
 借りた本は、井上清「戦後日本の歴史」(現代評論社、1966年)である。
 開講の問題とは、大学当局が1週間の暫定カリキュラムに続いて、文学部(一部)を連休明けの5月6日(火)から開講することを決めたことである。
恒心館

 オルグされるのを振り切って。

 オルグとは、組織・団体への勧誘をいう。英語のorganaizeの略称である。

1969年 5月 4日(日)
 (下宿の部屋にて)

 日記の記述。以下、「恋愛の幻想からの訣別!」に続く。
 一一・一〇AMの部分の文章は、恒心館の泊りこみ(下記参照)から下宿に帰ってきてから書いている。

 二十七日、中村氏と呑みに出かける以前と以後では、私との繋がりにおける鈴木と中村氏との関係はお互いに逆転していたということが確認点の一つ。それはスナックで中村氏と一緒に話し、一夜を飲みあかすことにより生まれてきた。

 中村☞1969年6月2日

 きのう平安の間でピアノをひいていたら、「高野君早く帰りなさいだって」。

 平安の間は、京都国際ホテルの大宴会場である。同ホテルに現存する。400㎡で正餐300人立食400人収容。2階にあり、メイン・ダイニング(当時)の近くに位置する。
京都国際ホテル

 そこで、昨日は恒心館に泊りこみ。
 恒心館の泊りは4月28日夜以来になる。
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