高野悦子「二十歳の原点」を参考に構成された演劇が、東京で開かれた。本ホームページ編集人は初日の2013年11月26日(火)の模様を取材した。
今回の演劇の会場は、東京メトロ副都心線の西早稲田駅近くにある学習院女子大学である。かつての学習院女子短期大学が1998年に四年制大学に移行した。
明治通りに面した大学の正門を目にしたことはあるが、キャンパスの中に入るのはこれが初めてになる。入構証なるものを受け取って、枯れ葉散る夜の並木道を受付場所の互敬会館(学生会館)まで歩いていく。
3つの上演からなる演劇の全体のタイトルは、『女子大生100年日記』。
学習院女子大学主催で、学生とプロの演劇家の組み合わせで企画運営されている演劇祭、pafe.GWC(performing arts festival at Gakushuin Women's College)のプログラムである。
料金は3つの上演を通しで2,500円。この日は前売り分が完売だった。学生によるカフェで開演を待つ。
3つのうち最初の上演が「二十歳の原点」を参考にした「こうしてワタシは完全になる~1969年 ある女子大生が書いた日記より~」である。パンフレットを読むと「1969年、世間では学園闘争まっさかりな頃、保守的な家庭の子女が集まる女子(短)大にも、現状を変えなくてはいけないと考えた学生はいたはずです。だからと言ってそうあるべきだとは思いません。女子大には、あえて世間から切り離されてサナギのようにじっとしている自由もあるべきだと思います。世の中の喧騒にかき消されてしまうような、小さな叫びがそこでは聞えてくるはずです。女子大の特色が失われつつある現在。無駄に思えることに情熱をかたむけたり、それこそ何もしなかったりする自由が残されているべきだと思います。─小池竹見」と紹介されている。
上演が行われる場所はホールなどではなく、互敬会館の中である。大学の施設そのものがステージであり、観客席になる。古くは寺山修司の市街劇をイメージさせ、期待が膨らむ。
午後6時すぎ開演。観客は約60人で、学生から年配の人までいるが、会場柄若い女性が目立つ。
ツアーガイド役の学生から1969年という時代や学園紛争の説明を聴いたあと、観客は上演場所に移動する。
そこで観客には「男1」「女1」…のセリフが書かれた台本が渡され、バリケードの中にいるカッコと言葉をぶつけあう形で役を演じる。観客を劇に引き込む演出である。
セリフは『二十歳の原点』のうち主に1969年5月ころの記述を参考に組み立てられていた。
作・演出の小池竹見氏は1969年生まれ。「日記をテーマに女子大で演じるという企画の中で、時代の転換期である1969年に書かれた高野悦子さんの『二十歳の原点』を選んだ」という。
小池氏は「現代に生きている僕たちが彼女の死に対して責任を感じたい。彼女が変えようとした〝未来〟の社会は、それほど良くなっていない。〝未来〟に生きている者がそのことに責任を持たないといけない。観客の方にも当事者になってほしかった。学習院女子短大では実際には紛争はなかったが、自分なりに想像したり考えながら組み合わせてみた」と語る。
多くの観客を前に、主演の平佐喜子さんは上演後「緊張した」と話しているが、むしろその緊張感が張り詰めた空間を作っていて好感を持てた。
「こうしてワタシは完全になる…」は40分、続く「放課後 女子学生 1920」「40歳の女子大生-女子学生2020-」を合わせた上演全体では2時間40分。