高野悦子「二十歳の原点」案内
二十歳の原点(2024年)

高野悦子が見た洋画

 「二十歳の原点」シリーズには、数多くの映画のタイトルが登場する。高野悦子の心情に影響したことがわかり、時代背景にもなっている。
 高野悦子が大学入学以降に鑑賞した映画を洋画を中心に紹介し、あわせて上映されていた映画館も説明する。

 『二十歳の原点』『二十歳の原点序章』に直接の記述がないものの、鑑賞していたことが判明した映画も含まれる。

天使の詩

 『天使の詩』(原題:INCOMPRESO、1966年)はルイジ・コメンチーニ監督のイタリア映画。カラー、105分。
 日本では日本ヘラルド映画(現・KADOKAWA)の配給で、1967年11月11日(土)に封切りされた。出演はアンソニー・クエイルほか。
 幼い子ども2人を残して母親が死亡した父子の家族愛を描く。「パリ・ローマ・ミュンヘン・ロンドン…そして、東京・大阪・神戸で記録的大ヒット!〈わんぱく戦争〉〈星空〉〈悲しみは星影と共に〉に続く涙と感動の愛の名篇…!」。
天使の詩広告京都東宝劇場地図
 京都では1967年12月1日(金)から22日(金)まで京極東宝劇場でロードショー公開された。

京極東宝劇場

 京極東宝劇場は、京都市中京区新京極通四条上ル中之町にあった映画館。東宝系だった。
京極宝塚劇場空撮京極宝塚劇場跡
 1973年に全面改築されたあと、映画館は2006年に閉館した。建物は建て替えられ、現在はビジネスホテルになっている。

若者たち

 『若者たち』(1967年)は森川時久監督、山内久脚本で劇団俳優座・新星映画社共同製作の日本映画。白黒、87分。
 1966年にフジテレビ制作・放送された連続テレビドラマの映画化。「若者たち」全国配給上映委員会の配給で、1967年12月16日(土)に封切りされた。出演は田中邦衛、山本圭、橋本功、佐藤オリエ、松山省二、永田靖、南美江、大塚道子、小川真由美、夏桂子ほか。
 いわゆる青春モノで、「やったるぜ!青春の情熱がスカッとした感激を呼ぶ青年の名画」。
若者たち広告美松大劇場地図
 京都では1968年3月20日(水)から5月2日(木)まで美松大劇場でロードショー公開された。
☞二十歳の原点序章1968年2月21日「Television 「若者たち」」

美松大劇場

 高野悦子が『若者たち』を鑑賞した美松大劇場は、京都市中京区新京極通四条上ル中之町の美松会館にあった映画館。美松会館には美松名画劇場もあった。
美松会館空撮美松大劇場跡
 美松会館の映画館は2004年に閉館した。建物はほぼ現存しているが、現在は衣料品店や飲食店になっている。

質屋

 『質屋』(原題:THE PAWNBROKER、1964年)はシドニー・ルメット監督のアメリカ映画。白黒、116分。
 日本ではMGM映画の配給で、1968年8月17日(土)に封切りされた。出演はロッド・スタイガー、ジェラルディン・フィッツジェラルド、ブロック・ピーターズほか。主演のスタイガーは本作品でベルリン映画祭男優賞(1964年度)を、また別の作品でアカデミー主演男優賞(1967年度)を受賞していた。
 ナチスのユダヤ人強制収容所で妻子を殺された過去を持つ男性がニューヨークで質屋となり、幻影を見ながらも立ち直っていく。いわゆる社会派作品で、「全世界の話題をさらった永遠不滅の名作!絶対に見逃すことも出来ない世紀の傑作登場!」。

異邦人

 『異邦人』(英題:THE STRANGER、1967年)はルキノ・ビスコンティ監督のイタリア映画。カラー、104分。
 日本ではパラマウント映画(現・パラマウント・ジャパン)の配給で、1968年9月21日(土)に封切りされた。出演はマルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・カリーナほか。
 アルベール・カミュの小説『異邦人』の映画化で、「*現代の青春に鮮烈な衝撃を与えるノベール賞作家カミュの代表作、完璧の映画化!永遠不滅の名作!絶対に見逃すことも出来ない世紀の傑作登場!」。日本では『アルジェの戦い』以来1年半ぶりに優秀映画観賞会特選になったという。
映画異邦人・映画質屋広告京都スカラ座地図
 『質屋』と『異邦人』は、京都では1968年11月14日(木)から27日(水)まで京都スカラ座でロードショー同時公開された。高野悦子は1968年11月20日(水)に鑑賞したとみられる。
☞二十歳の原点序章1968年1月15日「『異邦人』を」

京都スカラ座

 京都スカラ座は、京都市中京区河原町通六角上ル大黒町にあった映画館。当時、主に東宝系の洋画ロードショーをしていた。
京都スカラ座空撮京都スカラ座跡
 京都スカラ座は2006年に閉館した。建物は建て替えられ、現在は衣料品店や雑貨店が入る商業ビル「ミーナ京都」になっている。

未青年

 1968年12月5日(木)に鑑賞した。
未青年

白い恋人たち

 1968年12月9日(月)に鑑賞したとみられる。
白い恋人たち

ローズマリーの赤ちゃん

 『ローズマリーの赤ちゃん』(原題:Rosemary's Baby、1968年)はロマン・ポランスキー監督・脚本のアメリカ映画。カラー、137分。
 日本ではパラマウント映画(現・パラマウント・ジャパン)の配給で、1969年1月11日(土)に封切りされた。出演はミア・ファーロー、ジョン・カサベテス、ルース・ゴードン、シドニー・ブラックマーほか。
 アイラ・レヴィンの小説を原作とするホラー映画で、「見事な《名作》!!新しい《美》の恐怖!!、巨匠ヒッチコックを追い抜いた─鬼才ポランスキーの恐るべき最新作!!」「公開を前に、話題騒然!本年トップを飾る問題作!!」。
ローズマリーの赤ちゃん広告ローズマリーの赤ちゃん原作本
 京都では1969年1月25日(土)から2月28日(金)まで東宝パレス劇場でロードショー公開された。高野悦子は1969年1月25日(土)に鑑賞した。
東宝パレス劇場

小さな兵隊

 『小さな兵隊』(原題:LE PETIT SOLDDAT、1963年)はジャン=リュック・ゴダール監督のフランス映画。白黒、86分。
 日本では日本アート・シアター・ギルド(ATG)の配給で、1968年12月31日(火)に封切りされた。出演はミシェル・シュボール、アンナ・カリーナほか。アルジェリア戦争がテーマで、フランスで当初上映が禁止された。
 京都では自主上映されたとみられる。

アポロンの地獄

 1969年3月23日(日)に鑑賞した。
アポロンの地獄

無人列島

 1969年5月12日(月)に鑑賞した。
無人列島
『無人列島』・金井勝監督が語る

高野悦子が巡った映画館まとめ 高野悦子の映画鑑賞は、時期的には1968年11月以降に機会が増えている。ワンゲル部での活動が低下し、紛争に伴う大学休講などの時に映画館が林立する京都・四条河原町界わいの繁華街を歩くことが多くなったためとみられる。
 内容的にはアクションや娯楽モノがなく、元々あった社会性や海外への興味に加え、文学的作品から芸術的・前衛的作品に中心が移っていることがわかる。当時の学生文化や映画界の状況を反映していて、数多くの影響が日記の記述にも表れている。

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